風のささやき

雪の中に

寒い空から
雪が舞い降りてきて
雪の帳の中に
僕はまたお前の姿を
見失ってしまった
僕から離れていったお前は
今どこを歩いているんだ
とんがったあの山の
山麓あたりか頂上か
それとも山の
向こうだろうか
僕はこの降り積もる雪に
お前の足跡も 
見失いそうになる。

ああ 冬の日にはこうして
すぐにお前の姿を
見失ってしまう弱い僕に
一本のロープがあればいい
お前の首にくくりつけて
どんな時にも切れたりはしない
強い意志のロープがあればいい
僕はお前を見つめていたいのだ
お前が悪しき所へと
おもむかないように
どれほど凍てつく雪の日にも
手綱を引くようにして。

やがて降る雪は吹雪に変わって
世界中が荒れ狂ってしまうだろう
木立がちぎれるほどに揺れて。

それでも僕は
お前の歩く姿を方向を姿勢を
身じろぎもせずに
みつめていたいのだ
冬の冷気にやられることもなく
お前を真っ直な方向に
進ませたいんだ
お前が気高く優しくなれる所へと
僕の魂よ

雪の中に姿を隠し
お前はきっと
どこかの険しい山道で
幻想に悩まされているのだろう
よこしまなビジョンに
苛まれているのだろう
僕の魂よ
そんな所に留まらないでいてくれ
冷たい雪の中に埋もれ
手や足ももう動かさなくなって

お前をまた僕が見つけだしたら
今度こそ僕は
強いロープでお前の首を
くくりつけてやるから
凍傷にやられた体を
癒してやって
お前をまっすぐな方向に
進ませてやるから
草木の一本も生えないような
痩せこけ荒れた
暗い大地の上
僕は倒れ込みたくないんだ
人々も自然も
喜べなくなって