風のささやき

物語の終わりに

僕はそこで
書き連ねてきた物語の筆を置く
すべてが寝静まった夜更け
いつまでも書き続けていたかった
一つの小さな物語の終わり

いつの間にか短くなった鉛筆も
真っ黒に汚れたノートも
未完成の物語の
終わりを告げている

ところどころが濡れているのは
今だ乾かぬ涙の跡
震えている字は高ぶる心のままに
深くつくため息で
凍りついたページの間は開けない

物語の初め
確かに僕はこの物語の
終わりまでを書けるつもりでいた
物語の最後のシーンでさえ
鮮やかに胸に焼き付いていたから

どんなんひ甘い音楽よりも
僕はうっとりとしながら
僕の中の言葉を一つ一つ拾い上げていた
まるで花を摘む少女よりも夢見心地で

いつからか
変わってしまったストーリーにさえ気づかず
吃る言葉を直すこともできなくなって

僕はもうその先を描き続けることが
できなくなった
物語の初めの胸の高鳴りだけは
まだ胸の奥 疼いたままでいるけれど

物語を書きつらねた日々
そのすべてを知っている星々だけが
優しい光で僕の背中をさすってくれている

書き終えることのできなかった物語を
僕はまた一人諦めて
胸の奥に鏤める
僕の歩むべき先を照らし出してくれる
星月夜の星々を真似てくれるようにと