風のささやき

雨の朝に

いつの間にかもう朝だ
目覚まし時計だけが
可笑しな慌て振りでそう伝えている

夜のまんまのような
こんな空模様だからわからなかった
闇に包まれたままの僕の体も
起きる体制にはなっていない

雨音は耳に届く騒音を優しく包んで
その内に消してくれる
我が物顔に通る車のエンジン音も
電車の発車するけたたましい合図も
僕の耳から切り離されて
部屋は静けさが満ちたままだ

僕の意識が眠りの底から
モールス信号のような音信を伝える
もう起きなければいけない時間だと

ツートントン ツートン ツー ツー と
それも雨音に紛れ
力なくまどろみの中にまた紛れ込んで

せっかくなのだから
このまましばらく雨音に隠れて
僕以上に深い眠りにある
あなたの肩を抱いたまま
世界から切り離されていたい

目覚めてしまえばたくさんの
僕らに襲いかかるものから
身を守ることで精一杯になって
こんなに平穏な心持でいることは
とても難しいことだから

雨の朝のくれたプレゼント
世界の隙間に落ち込んだ時間
胸いっぱいの花束のように
あなたを抱いて