風のささやき

人ゴミの中で

貧弱に痩せた
灰色のビルの群が
黒い影を落とす通りを
うつむきながら動いている人ゴミは
悪い噂や
騒ぎ立てる声や
疲れて色の悪い顔で満ちていて
今日も
うっとおしい空模様のように
僕の魂にのしかかってくる
仮面をつけた人々の
偽りだらけの言葉が
鳴り響いている僕の頭は
頭痛の時の
不快感のようなものが
消えずにあって
みずみずしい生命の色が
目の中からは奪われてしまう
続いている顔のない
灰色の人間の行進に
優しい心や思いが
僕からは忘れ去られてゆく
魂は血の気を失ってしまい
争うことや言い訳が
体の芯までしみこんでくる。

ああもっと穏やかな気持ちで
僕の毎日を生かさせて
言葉にはならない
鋭利なナイフのような痛みを
もうこれ以上は
胸の中には
ためてはおけないんだ
生けるものを生けるものとして
生けるものらしく生かしめてくれ。