風のささやき

風の委託

詩は魂の安息日にやって来る
青い海からのあるいは遠い山からの
それは風の委託

凪いだ海のように静謐な魂が
肌を通して受け取る
瑞々しい手紙

それはいつしかの誰かの夢
分かって欲しかった気持ち
言い尽くせない言葉と一緒に
透明な文字で丁寧に綴られた

今も 風は
新しい物語を写し取って
僕に手渡そうとする
悲しい話だったのか
少ししっとりとしていることもあって

風は放ってはおかない
誰も忘れてはいないよ
忘れられるはずはないんだよ

僕は風に心を明け渡して
その中に文字を拾う
胸に高まる一つの調べ
さなぎを破り蝶が現れるように
ただ目を閉じてじっと言葉が
生まれて来るのを待つ

空に解き放たれて行く蝶
二度と思い描けない
かすかな燐分の軌道を
忠実に言葉になぞらえて
また風の流れへと返す

見ず知らずの人へ
遠い未来の人へ
それを感じる人へ の
それはもう僕のものではない
新たな風の委託として