風のささやき

飛行機に

今朝あますことなく 大地を濡らした
通り雨の名残
滑走路の 小さな水溜りには
何食わぬ顔の青空が
もう静かに 憩っている

その静けさを 打ち破るように
 動き出す 急な飛行機のエンジンが 
暴力的な熱風で
芽吹いたばかりの 若草を痛めつける 

空をめがけて 滑走路を離れ
銀色の翼光らせる飛行機の
空めがけて消えていく 失踪
―喉の奥の 星々凍る暗闇に
 落ちて とらえられなくなる
 僕の言葉にも 似て

車輪のゴムの 焼けた匂いが
鼻の中に 不快な異臭を残す
人々の背中を 押し付けた
一瞬の重力
大地から 解き放たれるための
鎖を断ち切って

毎日の 僕らの言葉も こんな風に
空へと 失踪し跡形もなく消えていく
青空の静けさを 揺すろうとする
壮大な試みの 果てに

空に 消えたままの言葉が
また地上に
降り立つ時もあるのだろうか
言葉の翼に乗せた思いが
また誰かに 巡り会うために