風のささやき

秋が
一人で歩き始める
僕の中でやがて
寂しい歌を
口ずさみながら。

街々の通りの街路樹は
すべての枯れ葉を
落とし尽くして
秋風がむさぼるように
その色彩を食べ尽くし
人々の顔を
蝋人形のように変えて
灰色の道をさらけだして。

冷たい空っ風は
捨て猫の汚れた毛並みよりも貧しい
僕のすりきれた衣服のうえからも
体温を奪い去ってゆき
僕は血をたぎらせたり
体に両手で
熱を持たせたりしながら
悲しい季節を耐えるようにしようと
凍りそうな自分の涙で
乾きひび割れそうな心を
湿らせるようにしようと。

それでも寒さに
意識が遠くなるときには
冬の中で僕は
さまよっている
六角形の雪の結晶を
顔にはりつけたりしながら。

倒れ込む僕は
白い墓標に
眠るだろう
青ざめて
静かに
いつまでも
降り積もってやまない。