風のささやき

別れに

僕らが
微笑みあいながら
語らいあっていた日々の感触は
僕らにはもう忘れられていた
暖かい陽射しに
抱かれるような

今は会ってもはがねのように
寂しく笑いあうだけで
疲れてしまう
あなたは黙って
僕の瞳をのぞきこむ

僕は何か
怒りのようなものに
表情をかたく
眺めていた
こんな別れにも
青く澄んでいる空に
山の頂をかすめ
かすかにゆく雲は
とりとめのない僕らの
心のようだと
風に形を変え
定めも知らずに
どこへ
流れてゆこうとしているのかと

道端に群る
色とりどりのコスモスは
風に頭を傾げ
ゆっくりと揺れている
そこだけ時間が
もどかしいように
はっきりと
その動きが見える・・・・・

小さな駅で降りて
二人
何度か訪れた
この草原に戻ってきてもう
遊ぶこともないのだろう
柔らかな草の上に
手足を放り投げて
交わしたいくつもの言葉は
ここに置き去りに

それぞれの生活を探しながら
暮らそうとする街の中では
気づいてみれば
うつむいて
家路へと帰る
寂しい夕べにも
あなたの面影が
かすめることも
なくなるだろう
日々の慌ただしさの積み重ねに
だんだんとその輪郭を
すり減らして

かすかな痛みは
いつの日の心にも
かたすみで
感じつづけながら