風のささやき

風の中で

歩き疲れ
春の公園のベンチに
腰をおろして
休む僕の姿を
風が包み込んで
流れて行く
髪を揺らし
頬をなぜ
まどろみを誘う暖かさに
目を閉じる僕は
自分のいる場所を
見失ってゆく
耳に歌う
風のなかに
まぎれこんで
消えてしまいそうになる・・・・・

風よ
僕はいま
何処にいる
そうして何処へ
流れて
ゆこうとしている
わからない
明日を
おびえそうになる
僕の弱い心は
風よ
わずかな悲しみにも
もろく
くずれそうになるから
支えていてくれ
僕の心を
涙に濡れそうな
瞳を乾かし
とぎれそうな
細い歌声の詩を
つづろうとする指先を暖め
絶えることの
ないだろう
争いと悲しみの中に
僕の生は
いつでも置いて
優しい者に
僕がなれるように
僕の眼差しで
すべてを
愛せるように・・・・・

風よ
木立は
おまえにくすぐられて
新緑を鳴らし
暖かい陽射しは
芝生の上を
走っている
遠くからは
子供たちの
はしゃく声が聞こえる
車の音が
どこかへと
走り去って静かになる
風よ
何をこれから
僕は
通り過ぎて
ゆかなければ
ならない
わからない
明日を
おびえそうになる
僕の弱い心だから
大いなるものを
信じさせていてくれ
いつでも
僕には
愛そうとする
意志の中に
消えない希望があると
信じさせていてくれ
どれだけか激しい
雨の夜に
一人苦しもうとも・・・・・

風よ
まつげを
濡らしそうになる
涙を
拭い去ってくれ
嘘のない言葉を
僕の口からは
語らせてくれ
優しい者に
僕はなれるように
まわりにはいつでも
微笑む顔や
穏やかな声が
あってほしいから
胸の内にまた
頭もたげる
騒がしさを打ち消して
僕をこのまま
抱きかかえたままで
風よ
風よ・・・・・