風のささやき

朝に

夕暮れよりも
はなやいだ色で
空はしらみはじめて
朝日が
昇ってこようとする
犬小屋の前の闇や
垣根の裏の闇までも
荒い流して
いくつものさわがしい思いに
乱されて眠れずに
ふけていった夜を
終わらせてしまうために

家々の屋根や白い壁は
光りにとけこんだ
ほお紅よりも淡い赤さで
色づけられている

赤い雲の合間を縫うように
空には鳩が
群をなして飛び
人影の
まだ見えない通りには
紙屑をカサカサと動かして
肌にさわやかな風が吹き

どこからともなく
かすかに聞こえる
新しい日の訪れを
待ちわびていたものたちの
明るく
歌おうとする声で
大気は
満ち溢れている気がする
小鳥達は体で
その喜びを
さえずっている

ああ朝日よ
お前の光りで
洗い流してくれ
この僕の心に
虫食うような小さな闇も
僕はこの身を
お前の光りのなかに
ひたし
立ち尽くしているから