風のささやき

落日

釣りをする人の竿の先に
釣り上げられている夕日が
川を赤く波立たせている。

赤い電車が
音を立てながら
大きな鉄橋をゆらして
通り過ぎる。

昼の陽射しの暑さは
わずかずつ
和らいでゆき
空が闇へと
とけこんでゆく色彩に
染められている
もうまじかに
二番星も
輝こうととしている。

わずかの間だけ
吹くことをやめた風と
虫がざわめきだす前の
一瞬の草原。

魚が一匹
体を弓なりにして
水面をはねた
錆色にきらめき
落ちては広がる
いくつかの波紋。

土手の上を
手をつないで通る
小さな影と
大きな影
そのまわりを包む
一日の終わりの
穏やかさと寂しみに
あかりのともる家々では
ささやかな夕餉が
食卓へと運ばれてゆく。

ああ
こんなひとときに
僕らはどれだけ真面目に
敬虔にさせられることだろう