夏の弔い
過ぎてゆく夏を惜しんで ひぐらしたちが 遠い山から寂しい 大合唱を繰り返す 残り短い命を絞り出すような 広い田畑には重たげな 黄色い稲穂が 頭をひっそりと垂れて 夕焼け雲の合間には 赤とんぼの群が 透明な羽までも紅に 飛び回っている 体の中の 方位磁石が狂ったような でたらめなその飛び方で 生い茂っていた 木立の上には 少しずつ 星がまたたこうとする時刻が もう訪れようとしている。 惜しむことなく 明日には秋が 山並みの上の空を高くして 夏を弔うかもしれない 少し冷たい風を 喪に服させて。