風のささやき

夏の弔い

過ぎてゆく夏を惜しんで
ひぐらしたちが
遠い山から寂しい
大合唱を繰り返す
残り短い命を絞り出すような
広い田畑には重たげな
黄色い稲穂が
頭をひっそりと垂れて
夕焼け雲の合間には
赤とんぼの群が
透明な羽までも紅に
飛び回っている
体の中の
方位磁石が狂ったような
でたらめなその飛び方で
生い茂っていた
木立の上には
少しずつ
星がまたたこうとする時刻が
もう訪れようとしている。

惜しむことなく
明日には秋が
山並みの上の空を高くして
夏を弔うかもしれない
少し冷たい風を
喪に服させて。