風のささやき

小さな窓

駅舎の高いところに見つけた小さな窓
真っ暗な夜を貼り付けた煤けた木枠
はられている蜘蛛の巣さえも
古ぼけて変色している

あの窓はいつからそこにあったのだろう
今まで気がつくこともなかった
そうして未だに気づかない人もいる
きっと普段は開かれることもない窓

誰が何の悪戯で
そこにはめ込んだのだろう
駅舎の一部でありながら
窓としての役割を奪われている
高いところにある古びた窓

羽根のある鳥や昆虫だけが
たどり着けるその高い場所
朝には目覚めた鳩が
忙しそうに電車に乗り込む僕らを
不思議そうに覗くのだろうか

仕切られた空間をつなぎ
あの窓は季節ごとの風
送り出すことを夢見ている
その風が朝の人の目を覚まし
夜の人の思いを安らかにする

灰色の壁の一部となり
鍵をしっかりと閉められて
役割を静かに諦めている窓
その顔は寂しそうに
蛍光灯の灯りに濡れて

僕は窓から心配そうに覗いた
満月と目を合わせている
人知れない高いところで
諦め耐えている窓に
心締め付けられている