風のささやき

祝福に

シェードランプから漏れたような仄かな明かりの中に
浮かび上がる白いウエディングドレス
白い大輪のカサブランカがその花嫁の頭上には咲いていた
今日の祝福のために咲き誇ることを知った可憐な純潔

賛美歌の一節に導かれるように
確かにそこには静かな風が吹いていた
それは集う人々の心に溢れた喜びの波動が
その幸せな早嫁に向けて
賛美歌の続きのように流れて行った穏やかな風

その風に包まれて
少し頬を赤らめた花嫁が上げる目線の
その先の人の胸元には
オレンジの薔薇が色を添え
それ以上に選ばれ選んだことの誇りが
二人の胸元を明るませている

今日の二人が
小さくこの世に生まれた日の出来事を
回想する人々のいる
それは一つの驚きの出来事
その小さな足跡からは
手繰り寄せることの出来なかったはずの
今日の日の二人の姿

燃え上がる蝋燭の炎が揺らぐ
震えるチェロの弦の響きも
パイプオルガンの音も
讃美歌の歌声も
背の高い神父の導きも
二人を祝福する全ては
人の手のなせるわざ

からみもつれあい
常に高みへと差し出そうとする
人々の手の営みの塔
その情念の頂に咲いた二人の姿

やがて産み出す者の
一つの手となって
人々の手の営みへと加わっていく
ますます高みへと差しだそうとする
手を持つ者として

その二人が誓いあった
今日の日の幸い