風のささやき

雨の一滴に

さっきまで降っていたにわか雨が
葉っぱに残していった一滴が
今 僕の頬に落ちてきた

明るんだ空の下では
予想していなかった冷たい驚きに
空を見上げた僕の眼には
まぶしい夏の陽が差し込んで来る

さっきまで激しい雨が降っていたなんて
あまりにも突然のことで
服を濡らした人も大勢いたなんて
信じられない青い空
黒い雲もあっという間に
白く化粧直しをして

僕の頬を滑り落ちた雨の滴も
すぐに跡形をなくして
その感触も忘れられている

あの雨の滴は何処に生まれ
今日の東京の雨に生まれ変わり
僕の頬を滑り落ちてまた
何処へ生まれようと
急いで消えていったのだろう

都会の川の流れにのって
やがては海へと流れ込み
そうしてまた雨となって
どこかの街の誰かを濡らそうと
きっと僕よりも長い生を
何度も生まれ変わりながら

短い一度きりの生の僕が
こんなにも単調な毎日を繰り返していること
少し生きることに急がなければいけないと思う