詩編:季節の調べ
春の想い
また春が来て
外を歩くことが気持ち良い切符
春風がさらった切符春の雨
上手く行かないことだらけ5月の終わり運動会にて
目立つ子のいる春の星に
春の星が輝いている桜雑感
人の視線など菜の花畑
カレンダーをめくるとまた春に
朝の木漏れ日を浴びる桜の木の下で
満開の花に透け木々へ草花へ
芽吹いて行く者たちの色合いが帰り行く春の夜に
芽吹いて行く者たちの色合いが春の暮れ
春の夕日が縁側に春の日に
いつの間にか葉桜の木陰春一番
春一番が吹いたのだと桜咲く頃に
花をつけた桜の木は春の雨に
暖かくなり過ぎた街を桜の咲く頃に
ほころび始めた桜のつぼみはいなくなった春風に
万国旗を持ち上げる力もなくなって春風に襟元を引っ張られて
春風に襟元を引っ張られて春の風船に
何かのイベントだろうか春の花屋で
店先に 並びきれないほどの二月の終わりに
空には大きなあくびのように春浅き空き地
ゆっくりと すれ違った故郷の春に
青い空が 田んぼの水に憩う桜
何の夢の最中に明るむ春に
梢には若葉が芽吹く春の公園
南風にのる 夕暮れの色は春の日に
春の風に明るむ川縁を春の日に
どことなく夏の想い
寝苦しい夜に
明日の暑さを予感させる夏の街角で
茜色に染まる夕空に夏の河原
確かに僕もその河原を走っていたんだ初夏の空に
初夏の空まぶしくて夏の香り
近づこうとする程に夏の青空に
どうしていいか少し鬼灯
祭りを告げる号砲が風鈴
嗚呼 風鈴がなっている花火
蝋燭から貰った炎で夏の朝に
汗がゆっくりと夏の駅で
今まさに電車は行き過ぎたところ夏の気配
うつ伏せで昼寝をする子供の髪が夏の午後に
籠の中に無造作に積まれた縁側の茄子が夏の終わりに
夏の終わりの匂いのする夏の午後のまどろみ
レモン色をした 太陽に染まる夏の午後
不用意に立派な入道雲だ午睡に
君の手が和らぎわたる初夏の午後夢のひとときに
暑さに寝苦しい真夏の夜だった初夏の風景に
僕の眼差しが透き通って行くのは夏を招き入れて
外では風が強く鳴っていた夏の終わりに
夕焼けに 金色に染まったすすきが夢の終わりに
夏空と同じ青い風船を紫陽花
一粒ごとの 雨を弾くたび初夏の風
横たわる僕に風の吹く夏の蝉
それはいつでも夏の終わりに
トンボの翅はステンドグラスのよう夏休み
林の中を僕と一緒に七月の終わりに
暦をめくっていたら秋の想い
葡萄
吸い上げる雨の恵み川縁で
電車が遠くへ走り過ぎて行き颱風一過
大きな颱風が過ぎた午後秋の風に眠る
秋の風に眠る秋の日に
風に金糸の刺繍で巡礼
骨と皮だけに細長く乾いた自分の影を秋の欅に
青い海の底に泳いでいる廃材置場で
秋の日差しが頭の上から注ぎ秋の祭壇
秋の陽射しは秋の古本市
人通りの多い商店街に並んだ昼下がりの虫
秋の昼下がり秋の午後に
それはどこの波打ち際の潮騒だったろう日本海
受け取ることを十三夜
空の高みの十三夜ブナの林で
もうすぐ 散っていくよってブナの林で
黄葉のブナは苦しみの秋に
苦しみから逃れる術を知らない心を持って秋の火守り
ようやく白い煙が立ち上ってきた田沢湖にて
あなたは深い湖の底から湧き上がる秋のベンチで
ここは風の一番の通り道紅葉に
誰よりも早く赤とんぼ
たくさんの鰯雲が冬の想い
冬の布団
眠りたいな雪が降る
雪が降る2月初旬札幌に向かう電車にて
揺れる電車から12月の初め東京にて
風吹けば落ち葉の長い冬
とてもとても長い冬だった雪の物語
くり返しくり返す雪は冬初め
冬初めの陽射しがクリスマスの夜に
どこからか鐘の音が聞こえてくる雪祭り
白い雪を汚して人が通り過ぎると冬の陽射し
冬の陽射しが床に広がる冬の海に
太いバチでドンドンと風が雪の朝に
どぶ鼠のように背中を丸めて冬の朝日に
コバルト色の海にさえ冬の太陽に
年輪を感じる重い冬の朝日が飛行機に
晴れ渡った冬の空は幾つもの踊る枯葉に
枯葉が明るい舞台で踊っている名残の雪
名残の雪が一頻りこの町を濡らした雪の夜に
いつになったら雪は冬の日
気持ちを込めないでトマト
雪のちらつく間に差す雪の降る街で
昨日からの雪はまだ止まない冬の夜に
冬の夜の冬の公園で
落葉は色とりどりで冬の公園冬の夕日に
ビルを真っ赤に濡らして赤い風船
いつから木枯らしに弄ばれていたのクリスマスの夜に
賑わう街に惹かれながら遅い雪
春隣りの雪はしっとりと濡れ冬の日
冬の朝