風のささやき

春の風船に

何かのイベントだろうか
たくさんの風船が
春の空気で一杯になって
あどけなく風に
揺られることを楽しんでいる

その楽しさは
子供たちの手に配られて
今日の遊園地には
なんて笑顔が多いことだろう

子供の歩みに合せて
空中を散歩する赤 青 黄色
小さな糸に操られた従順な子犬のように
まとわりついたまま離れない
時折 すれ違うと風船同士
鼻先を合せひそひそと
挨拶を交わしたりして

空中にあてなく揺られていること
あんなに楽しめてしまうなんて
風船は不思議に思えるな
自分の心が揺れ続けること
不安に思っている僕には

そんなつまらない心配事から
自由なままの風船の楽しさ
春の陽射し以上にまぶしく思えて

僕も心の揺れるがままに
暮らしていけば いいのかも知れない
それを受け止めてくれる
周りのすべてに身を任せて

光溢れた青空の手招きに
一瞬の隙に飛び立つ風船のように
泣きべその子供のことなぞ知らぬ素振りで
この心が飛んで行ってしまっても