風のささやき

冬の海に

太いバチでドンドンと風が
波打つ海を打ち鳴らしている
たくましい男たちのたくさんの腕が
振り下ろされるような激しさで

打ちつけられた海は
白い泡を吹きながら卒倒している
もうやめて欲しいという言葉なき叫びが
誰も通らない波打ち際に
投げ捨てられ打ち捨てられている

その振動ははるかな空にも届き
ばらまかれた鴎たちが
空を横切るコントロールを失う
錐揉み状で落ちそうな体を
維持しようと右往左往する

その鴎たちを串刺しにしようと
松の防砂林が頭を揺らす
まるで髪を振り乱す
狂乱の長い黒髪のように

曇った空の合間から目玉のように
白い太陽がのぞき込んでは
またその瞳をゆっくりと閉ざした
寒々しい風景を見ることが
忍びないとでも言うかのように

雨風に時折交る
白い雪の結晶は
やがては氷の粒に
変わるかも知れない
太鼓に合の手を入れようとして

その音に僕は夜通し怯えることだろう
まるで自分の胸の内に鳴っている
激しい不安を聞くかのようで