颱風一過
大きな颱風が過ぎた午後 さっきまでの鼠色が嘘のように晴れた空 顔を襲う強い風だけがその名残 力持て余した子供たちは 家の中で大きな声で騒いでいる その声を聞きながら 待っていた青空に 洗い立ての子供たちの服を干す 物干しに並んだ服の数 その数だけを風が着る 動き回る服はまるで 沢山の子供の舞踏 そのまま空に舞い上がる勢いで いいよそのまま 空に持ち去っても 来年にはもう サイズが合わずに着られない それ程に早い子供たちの成長で 遊びの履歴 汚れの染みついた色とりどりの服 お下がりに誰かにあげるのは あまりにも厚かましいから 何の痕跡も空には残さず 颱風は何処へ走り去ったのだろう 地上への爪痕と みんなの胸の不安を置き去りに 颱風は最初から無関心で 傍若無人の動き 僕らだけが慌てふためいている テレビをずっとつけていた 天気予報を眺めれば 熱帯性の低気圧に変わったのだと 淡々と伝える