風のささやき

赤い風船

いつから木枯らしに弄ばれていたの
クリスマスのイルミネーションで街は賑わい
温かな衣服に人はくるまれるのに
枝に糸をとられ途方に暮れる赤い風船

空は直ぐそこ
飛び立つこともできなくて
意地悪な葉の乾いた言葉に
胸張り裂けてしまいそうで

それぞれの会話に忙しい人々
風船には気がつかない
会話よりも声高に叫ぶ呼び込み
ビルのディスプレーは
大きな独り言を空に垂れ流す

赤い風船はかすかに助けを求め
誰にも気づかれない寂しさ
僕は「助けて」に 気が付いたけれど
ごめんね 手が届かない
ごめんね 高い君を見上げるだけだ

僕は君と似ている
飛び立ちたいと願いながら
都会の片隅に宙ぶらりんだ

誰にも気がつかれずに
中身は空虚で誰かの助けを求めている
風船は誰が手を離し
僕は自分で手を開いた

自分の力も知らずに
空に昇ろうとして
途中で動けなくなってしまった

赤い風船の下を楽しそうに歩く人々
飛び立つこともできず
助けられることもない
赤い風船はいつまでも独りだ