風のささやき

冬の夕日に

ビルを真っ赤に濡らして
落ちて行く冬の夕日
どんなに悔しいことがあったの
何を我慢しているの
こんな色合いをしているなんて

僕の顔も全部が真っ赤だ
手も足も夕日に染められて
胸が締め付けられてしまう
家の明かりが恋しくなってくる

交差点を歩く人たちの姿も
どこか寂しげに見える
逆立てたコートの襟で顔を隠して
イライラとした自動車も
声高にクラクションを鳴らしている

クリスマスのイルミネーションだけが
一人楽しげに輝きを増して行くけれど
今の気持ちにはそぐわない
よそよそしい限りだから
誰も振り返りはしないんだ

吐く息もいつの間にか白くなり
その向こうには輝き始めた青白い星
冷たく凍えて行く手の先が
少し痛いと悲鳴をあげている

僕も悔しいことが多いよ
僕も我慢をすることだらけだよ
冬の夕日がそっとベールで隠してくれるから

もう笑顔を飾る必要もなくなって
ぐったりとした心を
奮い立たせる必要もなくなって
重たい足で家へ帰るよ
せめて冷たい風に意地悪されないように
寂しさをこれ以上募らせないように

今日はもう眠ってしまおう
心配した満月には合わせる顔もないから
カーテンをしっかりと閉めて
夢と現実の間にうなされながらも