風のささやき

夏の香り

近づこうとする程に
感じているその距離の遥かさ
埋めることのできない時間

超えて届けようとする
途絶え気味の音信は
諦めの無い形を空に尋ねる
力無い笑いと共に
―僕はどこまで諦めが悪いのだろうか

蝉が鳴いている
耳朶に住むような蝉時雨
僕も蝉の様に過ぎゆく夏を
心おきなく惜しむことができたのなら
鳴き尽してその悲しみのあまり
短い命をパタリと終わらせて

離れる程に鮮やかに
終わり感じる程に
夏の香りは繰り返し蘇り
僕の心に陽射しを漂わせ

隔たりの時間の向こう側にいる物よ
僕はまた諦めの悪い夢に苛まれている