風のささやき

冬の日

冬の朝
寒さ湛える外気に
風景は人の吐く息で白い

朝日まだゆっくりと
山並みの稜線に
空に昇ることを
億劫がっているようで

冷たい水を一口含んで冬の朝
かじかむ手を擦りながら
いつもの駅へ向かう
足どりが運ぶ僕の心は
眠たい毎日に鈍り
寒さは無用の長物と感じている

針山となった街路樹の通りを
四角いバスは走る
ぎっしりと人を
その体の中に詰め込んで
時々急ブレーキで驚かせ

うつむいて上がる駅の階段
ホームは騒然とした
人の声 電車の到着する音
発車ベル ため息にも満ちて
僕はまた朝からけだるく疲れている

そうした毎日を
当たり前のものとして
受け入れる僕の心は
悲しみも喜びもなく
なんの痛みも感じなくなって

冬の朝
空だけが晴れ上がって
ああ 美しい