風のささやき

冬初め

冬初めの陽射しが
色をともす銀杏
その仄明かりの並木

黄金の精霊が
銀杏の一枚一枚に腰かける
物思いに耽る者 空を見上げる者
笑い声で震える枝もある
その場所はひときわ眩しい黄金色

ひととせの風を頑張って受けた葉
肌寒い風は吹き
そろそろ疲れ切ってしまい
精霊の軽ささえ
載せておけずの落下

神妙な顔をして落ちる精霊
地面に届かず陽射しに溶ける
身軽になって葉は
落ちる速度をゆっくりとした
手を伸ばした子供の手に捕まった

一生懸命だったね
お疲れさまと
一枚一枚 声をかけるには
あまりにも沢山落ちてきて
言葉が足りない

だから無言で
精霊の燃えてゆく
陽射しを肩から浴びる

地に落ちて少しだけ跳ねて
通りの風に消える落葉たち
同じ色の無い一枚一枚
歳月に身をそめて

言霊の幸ふ国にあって
ただいたずらに言の葉を落とすだけの僕
無色透明な声は何も染めず

遠のく精霊たちの大切な言葉
ただのさざめきにしか
聞こえないだけの語彙力のなさだ