夢の終わりに
夏空と同じ青い風船を 手に跳ねながら あの子は空の奥まで 飛べると思っていたのかもしれない 風船に詰め込まれた 子供の夢の身軽さに 風船もその気になって けれど旅立てなかった 一日の終りは新しい夢の始まり 暑くなりすぎた 体のほてり冷ます 母親の背中に揺られ 家路へと夕風に眠る さるすべりの花咲く道 ひっそりと咲く夕顔が その小さな後ろ姿を 見守っている ○ 夢と現実とが 混沌と混じり合う幼さを 大人は笑顔で迎え けれどその無邪気に 長くつきあうには 夢見る力を気絶させてしまった 何度も何度も 鈍器で殴り続けて 我に返れば退屈をはりつけた 疲れた顔を鏡に見るばかり 自分一人で背負う 夕日の重さ 足元に 感じるようになるときに 人は 長く伸びる影に 地上に 縫い込まれてゆくのだろうか 色あせた 夢の終りにも 変わらぬままに咲く 夕顔に 初めて気がついて ほっと 一息をついて