風のささやき

夏の午後

不用意に立派な入道雲だ
まるでいつしか沸き立っていた
愚かさ一杯の思いのようだ

もう消えてくれてさっぱりとした
あくびでためた目一杯の涙を
僕は頬に伝わらせてから眠ろう

白いカーテンが小さく膨らんで風を捕える
確かに風の姿がみえる
捕らわれてはすり抜けて
終わりの無いいたちごっこだ

いつまでも勝手に戯れていればいい
もう僕はそちらを見ることはしないから
体を横にして背中を向けて
収まりの悪い右手を心臓の上に置いて

夏の午後の手足は気だるい
頭はもっと気だるい
熱さを持っている

僕の中から湧いて出るような熱さ
何かが壊れてしまったのか
収まりのつかない血潮が駆け巡るのか
僕は犬のように口を半分開けて

誰も望んでいるわけではない
こんな姿でいることを
僕は嘘のつぎはぎだ
すべては僕から剥がれて落ちて
何の誠も残ってはいない

その罰に僕は焼かれているのか
嫌な汗が止むことはなくて

合歓の木の葉が揺れている
何かに疲れたように
合歓の木も後悔をしているのだろうか