風のささやき

花火

蝋燭から貰った炎で
花火が燃え上がる
暗闇が驚いたように
一瞬にして仰け反り
その周りだけが明るくなる

浮かび上がるのは
浴衣を着た花火を持つ子の手元
真剣な眼差しで火花をみつめている

それは何時かの夏の
僕の姿に重なる
その後にどれほどかの
暗闇のトンネルを通り抜けて来た
今は年老いた父親の顔で
明りの中に寂しく笑う

一瞬にして
花火が消えると
後ずさりをしていた
暗闇が近寄って
子供を呑みこんだ