風のささやき

夏の終わりに

トンボの翅はステンドグラスのよう
遅い夏の夕日を
あちらこちらで透かしている
そこにどんな祈りは降り立って
頭重くする稲穂は小判を実らせる

鳥は夕日に編隊を組み
一斉にねぐらに帰ろうとする
待宵草が月を迎えようと花を開く
河原にはなすすべもなく
悲鳴をあげて流れをすべり去る夏
昼間の間の熱を
ゆっくりと丸い石は吐き出し
山の上の星は放心している

夕餉の準備にさっき
鯉の腸を洗った
家の前の池も闇に触られて
水面に広がる血ともう
その色合いも区別がつかなくなる

僕の胸には去っていく
夏があった証のような
かすかな火照り
それも灰色の燃えカスになる

きっと明日には
ひきずりだされて秋は
泣き言をならべ
白い指先で風景を
ひっかいていくだろう

夏の面影を削ぎ落すように
病的に瘦せた輪郭のような
力ないか細い線で