風のささやき

菜の花畑

カレンダーをめくると
3月の写真には一面の菜の花
黄色の大地

行ってみたいなその場所に青い空の下
歩いてみたいな一面の菜の花畑
もう蝶も羽ばたきを始めるころだろう
その羽ばたきのように浮かれた心で

菜の花に触れて
春の陽ざしは明るんで
その場所はひときわ暖かな
祝福されている場所と人の知る

一番下の子の背丈では
菜の花畑に迷子になるだろう
手を離して走り始めた瞬間に
行っても行っても
菜の花の先はまた菜の花で
子供は途方に暮れて泣き
その泣き声に向かって僕は急いでと

僕は目を瞑る
自分の中にある
いつか訪れた菜の花畑にしばし遊ぶため
いつのことだかその黄色の海原に遊んだ
風吹くたびに一斉に揺れた菜の花の波だ
舞う蝶は優しい形の波しぶき
ただただ明るく陰影差し込む
隙も無かった外界にも僕の胸の内にも

こんな宝物を秘かに胸に抱えていられるなんて
僕は沢山の物を見せてもらったんだなきっと
ありがとう
今さらながらに独り言を呟く
カレンダーの前で