風のささやき

飛行機に

晴れ渡った冬の空は幾つもの
明るい星の御座すところ
ひときわ印象的なオリオンを始め
幾世代もの冬空を飾った星々に
加わろうと点滅を繰り返している
飛行機の灯火
 
どんな瞬きの星になろうとしているのか
それが途方もない企てだとは知りつつも
また今日も空に上り
星に届かぬところで悔しげに
僕の視界から遠のいて
やがて大地に降りていく

知っているよ
今日も星には届かなかった試みが
幾度となく繰り返されていること
それが最初にはもっと低く
短い飛翔であったこと
 
飛行機の上にはきっと
空にいることさえ気付かない
小さな子どもが眠っている
あるいは疲れ切った人は目をつむり
しばしの休息に身を横たえて
その横ではささやかながらの祝杯に
ほろ酔い加減の人もいて

知っているかい
それが当たり前の
日常に組み込まれていることが
ついぞ新しいことだって

星にはとても
今は届かない飛行機だけれども
あんなにも空高く
たくさんの人を持ち上げられることを