風のささやき

春の公園

南風にのる 夕暮れの色は
ビルの谷間の 公園に届き
菜の花の 花壇にまで波打ち 芝生は
暖かな カーペットのように燃えて

その優しげな顔は
空を飛ぶ 鳩の翼にもとまり
どこか柔らかな 天からの あまたの
使者のようにも見えるけれど

春のいたずらな優しさは
僕の心を憂鬱にふさぐ
まだ冬の 冷たさのままに
とけ出さない 凍てついている心
風景にはよそよそしく 青白い顔をして

ベンチに話す 人々の肩を
穏やかに抱いて 薄すら笑う
春は軽薄な 道化師のように見えて

そのわざとらしい演技に
笑顔を作る人たちの 心持ちは
だまされているだけだのだと
わがままな僕を 不快にさせて

春は 渇いた街を渡って
のどが渇いたからと 公園の噴水に
水を飲みにきただけなのだと
僕は一人 陽気におどける
明るい笛に 踊れるものではない