風のささやき

桜雑感

人の視線など
まるで気にせず咲くようで
それでていて見られていることを
意識しているようにも見えて

沢山の視線を謳歌しているようで
花を散らすたびにそれを惜しむ人々を
楽しむように思いやるように

遠くからは桜色の雲
人々はその中に遊び
桜色の雨に降られ
見上げれば一つ一つの花が
窮屈そうに肩を寄せ合っている

彩り添える花もある
菜の花 すみれ 犬ふぐり
木蓮 山吹 雪柳

川の流れをなぞるように咲く
川縁の桜並木の下を
乳母車を押しながら歩いたこともあった
桜には興味を示さない赤子を抱き上げて
その頭を花に近づけたら笑った

それから幾年かを重ねて
桜咲く頃の川縁の公園で
子供たちはブランコで風を切った
勢いよく滑り台を滑り降りた
萌えた緑の大地に寝ころんだ
気持ちの良い風がそこには吹いていた
その風は桜の花びらを運び
子供の唇を奪ったものもあった

小学校でも咲き誇る桜
入学の子供たちの胸に
誇りを与えるようで
明るい未来があるとそこに幸あれと
それを植えた古人の祝福を思い

一つの花の開花に様々な思いを重ねる
この国の人々の細やかさを嬉しく思い
その人たちに賛美されるだけの芳醇な
季節の移り変わりその鮮やかな恵み
見上げていた桜に改めて思った