風のささやき

苦しみの秋に

苦しみから逃れる術を知らない心を持って
これからも生を続けなければいけないことを
また感じている今年の秋の風は
一際に澄んで僕の胸をしめつけるから
生を続けている自分の健気さが少し哀れにも思えてきて
僕は自分の手をじっと見つめてみる
この歩みの果てにどこまで
僕の生は届くことができるのだろうか
その深さを測りかねてすくむ足を
進めさせるものもまた
立ち止まることの怖さに耐えかねてのこと
若き日の痛みもいつしか消えるものと思っていた
空に失われていく白い雲を真似て
けれど生の迷いと苦しみは深まるばかりで
暗澹たる思いに胸を塞がれている毎日に
精一杯の強がりの声さえくじかれて弱く
目に映るものの上には雨のように灰が降り積もり
景色はわびしく色を失うから
僕を慰めに来る秋の陽射しも弱々しく
肌の上に弾けて消えて行く
生に弄ばれているかのように
苦しみの周りを彷徨している僕の歩みは
遅々として進まないけれど
せめては明るんで見える方に歩いて行かんことを
僕自身が生を見捨てない限り
僕が生に見捨てられることはないのだと
心が確かに信じていられる間は
苦しみの固い結び目を一つ一つほぐしながら
喉の奥から零れ出る嗚咽を言の葉に換えて