風のささやき

冬の朝日に

コバルト色の海にさえ
入りきらない冬の朝日が僕を見つけて
僕の目をその光で満たそうとする
 
その眩しさには思わず
目を閉じて朝日を取りこぼしてしまう僕
 
閉じられた目の裏側には
真っ赤なままの印象がはっきりと残っている
僕はそのまま10秒も20秒も
目を開けなくって
 
その合間には僕の腕時計にも眼鏡にも
朝日は押し寄せて
入りきれずにあふれ出していった
 
まるで自由に行きかう水の流れだ
淀むことを知らずにすべてを洗い
いたるところに流れ明るんで
 
できることならば
その光をとりこぼすことなく
僕の目を満たしていたいけれど
重いコートの代わりに
朝日に身を包んで輝いていたいけれど
 
僕の大きな鞄でさえも
光をつめこんで帰るには
あまりにもちっぽけな容器
 
雪頂いた山々と波静かな海と
田畑と縮こまる家々との
起伏のある風景でさえ
朝日にはあまりにも小さな入れ物
 
林の木々の合間さえも
朝日は埋め尽くして
まだ余りあり
 
僕らが好むと好まざると
光はいつも必要以上に
僕らを取り囲んでいる