風のささやき

冬の太陽に

年輪を感じる重い冬の朝日が
狭いビルのすき間に身をねじ込んで
横顔を覗きに来る

そんなにも気になる顔かい
何度も何度も太陽の下を
歩いているというのに

それとも疲れ果てた僕を
心配してくれてか
肌に心地よい陽射し
目覚まし時計の代わり

大丈夫
僕はもう起きている
もう少しだけ布団の温もりを
楽しんでいたいだけだから

  〇

歩く先々で
黄の銀杏や茶の朴の葉が
トレモロを鳴らしている

陽射しがキラキラと
砂金になって落ちる

上を向いて歩く
僕の顔が輝いているとしても
何の不思議もない

  〇

それは冬の風にくべられた
軽く燃える炎だ
温もりを感じる

子供は素直にその熱を
体に取り込む

ゴムマリと見間違うように
転がり跳ねまわっていた
二人の小さな男の子は
息も切らさずに
どこまでも勢いよく
弾んでいった
もう姿も見えない

  〇

誰かが手放した
いくつもの風船が
青い空を逃げてゆく
もう人の手の届かないところ
逃げおおせた自由を満喫している

いつの間にか
過ぎた時間よ
それと共に歩み去った人たちよ
僕はまだまだ元気でいること
心が今 温かであること
なぜか伝えたく思っているよ

  〇

足早に通りを歩く
うつむき加減の人の胸にも
隠し切れない言葉は
溢れる 零れる
それを隠そうとする
マフラーは色とりどりで