風のささやき

廃材置場で

秋の日差しが頭の上から注ぎ
僕の上着を脱がせている
少し汗ばんだ僕が
立っている廃材置き場

廃墟となるアパートの
打ち捨てられた木材は折れて白い
その体 貫いていた釘が
無造作に顔を覗かせて光る

薄汚れた前歯が
今すぐにでも噛み付こうと
挑みかかるような仕草だ

お前は何故そこから
見下ろしているんだと・・・・・

僕はそこに残された
生活の面影を読み取ろうとしていたのだが
誰にも見向かれず捨てられて
積みあがって行くものの中に漂う
声にならない声に耳を傾けようとしていたのだが

背丈低く陣取った
秋の草はそ知らぬ顔で
鰯雲を眺めたまま無言だ

その姿勢がきっと
正しいのかも知れない
秋の風が僕に囁やいていくから
お前に一体何が分かるのかと

誰にも気がつかれずに
都会に捨てられて行く物たち
積み上げられて忘れ去られてゆく常の
物たちをここにも見ながら

呆然とたたずむ自分に
秋の陽射しが当たっている
誰もいなくなった廃墟と廃材置き場と
まるで恨みがましい生焼けの骨を見るようだ