風のささやき

遅い雪

春隣りの雪はしっとりと濡れ
白い花びらのように頬に落ちる
奪われた肌の熱が涙となった

遅い雪は何を伝える
空からのおすそ分け
すぐに壊れてしまう
頬の冷たさを
もう忘れている僕がいる

人通りのない道に傘を捨て
手を空に白くなる
まつげに小さな重さを感じて

耳をかすめるのは微かなささやき
地に落ちて重なり合う雪
今日の空がくれた大切な贈り物

毎日を何も聞かない僕がいる
心を閉ざして鬱屈した気持ちを募らせて
足早に過ぎるものから心をそらして

僕に触れようとする
それはどんなにか大切な
メッセージかも知れないのに

白い息を吐く
僕のために降る雪に
心は静まり返る

肌に触れた雪の冷たさ
すぐに失われるその言付けを
心にも精一杯感じていたい