風のささやき

冬の夜に

冬の夜の
胸は冷たいがらんどう
助けを求める言葉も虚ろに消える
深い谷底に投げ込んだ
石がいつまでも音を返さないように

冬の夜の胸には
木枯らしが吹く
白い粉雪も舞い込んで
視界が閉ざされる
白い溜息を吐く以外
許されない僕は
あてどなく暗闇に出口を探す

冬の夜
胸の内から染みだす冷たさに
指先も爪先も凍える

例えばこの部屋で一人
息もせずに 明日の朝
冷たくなっている僕だとして
きっと不思議ではないこと

だからきつい蒸留酒をあおり
内から胸を焼こうとするのだが
その酒の強さにむせた
涙まじりの赤い顔が鏡に浮かぶ

冬の夜に一人
忘れられた玩具のように
放り出されて

冬の夜の胸はがらんどう
どこまでも冷えてゆく
しんしんと しんしんと
涙でつららもできるかも知れない

冬の夜
一人で燃え上がる薪はない
誰かの傍らに眠りたい
小さな炎を胸にともしたい

冬の夜
助けを求める
言葉がうつろに響く胸だ