風のささやき

赤とんぼ

澄んだ秋の空を
たくさんの鰯雲が
心地良さそうに泳いでいく

その海のほとりで
迷走しているのは
たくさんの赤とんぼ

透明な羽で空を
叩く 一生懸命が
その枝のような体を
支えている

秋の空に
溺れてしまっているのか
どこに泳ぎつけば
いいのかも分からずに

ひと時でも
その羽を休ませた
向日葵は首を落とし
トウモロコシは
立っていられなくて
穂の長いススキも
秋の訪れに小刻みに震えている

羽はいつ休むことを知る
空を舞い続けることしか
術を無くして

やがては空に命
燃え立たせる赤とんぼ
薪のようにくべられて
夕日に炎 点されて

その紅は秋の頬紅
木々を景色を
赤く色づけるには
十分な量で