風のささやき

夏の終わりに

夕焼けに 金色に染まったすすきが
静かに 揺れ続けている
ゆっくりと 金粉を撒き散らしながら

それは 蓄えられた夏の陽射し
それが跡形もなく サラサラと風に
消えてしまおうとすることの
一揺れごとの 動きは
告げることやめない すすきのさよなら

その穂先には 辛抱強く
留まったままの 赤とんぼ
もう 秋めいた風は白く
飛び立つのも 億劫なのか
透明な羽は 遥かな夏の日に
まぶしい 壊れ物のように

きっと 揺れながら感じている眩暈は
小さな命の 微妙な揺らぎ
死と生の間で振れる やじろべえのような
体一杯で感じようとする その感覚に

やがて夕日が 車輪のように
空に消え行こうと 燃え立つときに
赤とんぼも その身を高ぶらせて
炎のように 命の際を
燃え上がらせるのだろうか

そうして 赤とんぼの小さな生を
またこの夏の終わりに 見送る僕は 
赤とんぼの何千倍もの時間を
細々と 生き長らえる

空に忘れられた 暗い星よりも
命 輝かす術を知らないままに
ただ 見送ることだけを
成す術もなく 繰り返しながら