初夏の風
横たわる僕に風の吹く 甘く澄みきった草原の真昼 初夏は涼しさ弾く 透明な指の連弾 まつげも髪も 風の遊び道具に貸し出したまま 頭は涼しい青空で一杯だ 氷河のような白い雲が流れて 木陰にこのまま眠ってしまおうか 眠気を誘う耳の奥の子守唄 風は白樺の森に帰る 眩しさをまた取り戻すために 葡萄の一粒を唇に軽く 噛むような感触を忘れられずに 飛びたてない傷ついた小鳥の 閉じた瞼にしみる陽射しに にじみ出す涙は昔見た 夢の轍をまたなぞり 物憂い痛みが心に広がっていく 僕が僕であることの 言葉にしっかりと光りを含ませて 愛した人の忘れよう