風のささやき

詩編:時の樹

詩編:時の樹

古い木の家

忘れられた少年に

卒業

もうここに届いてしまった

どうしようもない大人

救われることなんて無いよと

今日を

けたたましい声で笑いながら

僕の魂は

僕の魂は広い野原を走り回りたがっている

言葉

生きるごとに言葉は

言葉の棘

もう何年も前の

叫び

大きな声を上げて泣いている子供は

青い涙

何時の間に僕はこんなにも

万華鏡

小さい時分に貰われていった

深く耕された日

僕がまた深く耕された日

独りよがりの言葉

地面にへたばっている

タイプミスの僕

無数の無責任な指は

違和感

違和感を感じていた。

苦き日

まだ知らない苦しさがあると知る日

がらくた

布団の中は一人の苦しい世界だ

歪み

僕は笑ってみせる

黒い炎

太陽の汚れの僕の影が

間違って切ってしまった指先

悲鳴

君はその悲鳴を聞くか

中途半端な歌

すべてが中途半端な僕だけど

青白い静寂の封印

その扉を開けば・・・

ある日

今更ながらにして

失敗

こっそりと胸の中にしまい

白い歯に

僕と目が合うと

漆黒の部屋に

重く錆びた扉が開かれて

酸っぱい涙

また野焼きのような不吉な炎

春疾風

春疾風

生は

自分が滅びて行くことが

一人で

この体と心とを与えられて

何度でも、青空の下で

今日もまた 後悔の塵が積もる

もう僕は何も

もう僕は 何も耳にしたくはなかった

僕の業に

僕は 欲張り過ぎたのだろうか

傷口

笹の葉の縁で指の先を切った

新しい気持ち

寒かった風が光りに潤んで通りすぎて行く

新しい気持ち

泉のように

僕は時間を

一足飛びに時間を

かみ締めた林檎は錆の味がした

熱病

寒々しい静かな夜だ

籠の中の小鳥

籠の中の小鳥は寂しい

ここにいては

ここにいてはいけない

朝の光に

ごらん

忘れられた少年に

暗闇から 微かな物音が聞こえて

野に遊ぶ