風のささやき

悲鳴

君はその悲鳴を聞くか
毎日のささくれだった出来事に
けずられ続ける心の

君はその痛みを感じるか
牙をむき襲い来る
無機質な感情の塊に
打ち抜かれる肉体の

君はそれでも息ができるか
のしかかってくる
のっぺらとした毎日に
鼻も口も塞がれて

水晶体をいたぶるに充分な
刺だらけの表情の繰り返し
いつからか僕はもう
無防備に目を見開いたままで

乾ききった瞳を潤すために
僕の頬を涙が伝ったとて
青い空が一瞬綺麗に映えたとて
地面に叩きつけられる定めにあることで

僕の足元に暗闇が広がり
蛇のように舌なめずりをしている
僕は何処まで落ちて行き
意識を無くすことだろう

何も無くなった僕の頭蓋骨に
渦巻いている騒音を
止める術を知らずに

僕は研ぎ澄まされた心を
せめてナイフにして
僕の指先を鉛筆に見立て削るんだ
僕の悲鳴をノートに刻み込むために
僕がここにいることを
自分でも確かめるため
指先の白い骨を細く尖らせて