風のささやき

金色の朝日の降り立つ
海原は幸福な笑顔に満ちて
僕は まぶしさにその顔をみられない
いつの間にか そこから
歩み出してしまった者の 深い業として

船がゆっくりと 広げる航路を
光の波が親しみながらついて行く
すべてを信頼しきった
歩みはじめの 幼な子のように
笑いながら 追いかけて
甘えながら まとわりついて

僕があんな 思いばかりだったのは
いつの日のことか

その大きな後ろ姿を信じきって
おぼつかない歩調を 恐れることなく
何度転ぶことも 痛くはなくて
その姿を追いかけていれば
僕は幸福に 導びかれるのだと

人はいつから こんな臆病になるのだろう
大切な親しさを忘れて
ぎこちないけど
美しい歩みを忘れて
素直なままの 溢れんばかりの
微笑を 忘れて