風のささやき

海辺の夕日に

夕日は饒舌だ
なぜこんなにも胸にしみてくるのだろう

僕はただそれを聞く人になる
全身で

すすきも僕にならって
風に揺られて

やがてその感動を伝えようと
空に言葉を描くけれど

読めないよ
残念だね
空振りだ

この世界には
言葉ではとらえられないものが
あまりにも多すぎて

僕ももがく時があるよ

もがく先に生まれてくる言葉もあり
行き止まりもあって

言葉にならないもどかしさも
素直に受け止めていられるほど
僕は長く生きてしまって

何の言葉も今は頭から
取り出せそうにはないから
ただ静かに
夕日の言葉を聞くだけにするよ

水平線に金の道をかけて招きながら
僕を夜に置いてきぼりにしようとする
その速さには戸惑いながらも

やがては暗くなる空に
今度は饒舌な星が昇り
僕の胸にしみだしてくる