風のささやき

饒舌な夕日

海辺の夕日は饒舌に胸にしみる
それを全身で聞いている 一人

赤い波間に心も揺られ
椰子の実のように
はるばると遠くに運ばれる

海の遠くから来たように
心は夕日の沈む方を懐かしがる
胸の内を誰かに伝えたくなる

透明な言葉を
暮れなずむ空に描く

誰も読めないよね
残念だ 空振りだ

この世界には
言葉でとらえられない気持ちが
多すぎて もがく

もがく先の言の葉もあり
そこから動けなくもなって

浜昼顔が潮風に揺れ
昼間の熱を忘れようとする

言葉にならないもどかしさも
いつからか受け止めている
上手くいかない日々に
慣れてしまった
このまま言葉を持たない
僕は人になるのだろうか

水平線までの赤い道
こちらにおいでと招きながら
夜に置いてきぼりにされる
その速さに戸惑いながら

今は何の言葉も頭に持たず
ただ静かに夕日を聞いている

やがて紫に染まる空には
星々が饒舌に瞬き
この胸にまたしみいる