風のささやき

大木の詩

太陽が 僕の上にある
陽射しが 降り注いでくる
すべてが 僕の栄養

僕はたくさんの 枝を伸ばし
葉をひろげる
風を掴んで 膨らむ

明るい 秋の陽射しと
銀色の言葉をかわす 午後
僕の体を地面に 写し取っている 影

静かな水を湛えるように
透明に潤む空
その澄み渡る 湖に身を浸そうと
心 高鳴らせ あこがれのまま
力の限りに 梢を伸ばす

大きな枝には 小さな子供が
ぶら下がり遊ぶ 何人も
僕はそれを 持ち上げられる強さに

僕の体を 巡る樹液は
雲が絞った 雨の恵みから
大地を貫く 深い根を駆け上がる
清らかにほとばしり
空に呼ばれて
伸びること止めない 枝の先
一枚一枚の 葉の管へと

僕を高く飛び去る 鳥の姿は
憧れ心に 焼き付ける陰影
飽きることなく 自由に空を満喫する
白い雲は ここまでおいでよと告げる
絶え間ない 呼びかけ

葉っぱが 笑い
ざわめいているのは
風との会話が 楽しすぎて
いつまでも 止められないでいるから

足早に 一日は過ぎて
いつしか顔をかえて 空は夕暮れ
僕は蝋燭よりも 赤く燃え立ち
訪れる夜の 道標となる

一番星 二番星と
夜空を照らすものが 沢山で
月も憩う 星月夜
星々の会話に 聞き入ること
それは僕を深めて行く 知恵

ああ そして時は今 秋を迎えて
玲瓏な風が 年輪を重ねる 季節だと告げる
一層 深まり行くのだと 耳に語りかけてくる

過ぎたひととせの 想いを全て身に宿し
去り行く葉の あるだけを落とし尽くして
深く自分の中に 潜り込む僕は
身じろぎもせずに 体に力を漲らせ 冬に立つ
どこまでも高みを目指し 青空に捧げられた
一つの 祈りの 形象として