風のささやき

化石に

その扉を開いたときに
世界は壊れ始めた
いつの間にか
僕を招いていたその扉の先で
 
誰か僕を助けて
真っ黒な闇に世界が包まれて
明かりが見えない
心が何処までも不安になっていく
 
人の口から零れ落ちる身勝手な声が
僕の耳に鳴り響いているよ
誰もが勝手なことを話す
止むことのない騒音のよう
 
ビルの上の方から落ちてきては
肌の上に突き刺さる
透明なとがった破片
僕の体を傷つけているよ

電車に運ばれて荷物のように
行ったり来たりの僕の頭は
すっかりと乗り物酔いで
いつまでも頭の中は
グルグルと回ったままだ

冷たいビルの風は僕を凍えさせ
だから僕の吐く息はどんどんと白くなり
首筋には鋭利な刃物が
いつも当たったままだ
脂汗のにじむ額はいつも緊張をして

指先も震える
シャツの襟元も止められない
だから僕はいよいよ冷たくなって

誰か気づいて
こんなにもたくさんのものに
僕が壊されようとしていること

僕の心がギュッと小さく縮こまっていく
やがては地中深く閉じ込められたような
圧力と冷たさとで呼吸を失う

ギュッと体も小さくなって
無機質な青白い化石になるんだ
もう目覚めることもない