風のささやき

僕の魂は

僕の魂は広い野原を走り回りたがっている
裸足の足は踏む
青臭い草の香りに包まれる

野原の真ん中に伸びる一本のプラタナス
そこを目印として
従える体は走ることの喜びだけに満たされて

吹き遊ぶ風に衣服を取られて
やがてはそれを脱ぎ去り
透明な風の衣服に肌を包まれて

陽ざしは体彩るたくさんの真珠の粒で
流れ落ちる汗は七色に光って
僕自身も走り回る自由な光の体になって

ゆったりと青空に浮かぶ一つかみの雲が二つ
まるでいつまでも追いつかない
追いかけっこをしているようで

追いかける楽しさを楽しんでいるから
僕もまたそれを真似て
いつまでもたどり着けない憧れを

追いかけることを楽しむことにして
いつの間にか心にも顔にも
子供の笑いの愉快さを浮かべて

僕は夢見て目を閉じて
遥か昔の人の眺めていた深い空の色
夜空彩る沢山の星の川の流れの色彩を

見る物をすべて新鮮な物として
顔を打つ雨の一粒にも洗われる心で
空架けた虹の幸の橋を潜ろうと

僕の魂は広い野原を走り回りたがっている
いつからか体に重く食い込んできた
錆びた鎖の重さから解き放たれて

僕の魂は単純にあれ
憧れの後をただ楽しくて付き従うだけの
眠らせた童心を今ひとたび呼び起こして