一枚の落葉に
学校公開日の正門に 綺麗な落ち葉が一枚 子を手招きすれど 興味を示さない 男の子だと苦笑いする 「綺麗な色の葉だよ」 相手にされなかった言葉が 僕を二周、三周 渦巻きこだまして消えた 美しく見えるものが 誰かに届かない寂しさに 言葉は勢いをなくす 伝わるはずの期待は 後ずさりして ありきたりな言葉に書き換えられる だから思いの重なる ほんの僅かな瞬間は このうえなく嬉しいのだろう 共に見上げた空の青さ 吸い込まれ方は違うにしろ だから人は歌うことを止められない 何度でも思いを届けようと 見えるものを 感じるものを 繰り返し分かち合いたいと 伝わらぬことに傷つき 諦めの間に揺れながら 古書に挟む落ち葉の栞 遠い異国の風が染めた色 その人がくれた 忘れがたい 贈り物 その思いに 眼差したものに 重なり合おうとする試みが 秋の深まりのように 僕をじっくりと錦に染めてゆく
色づいた落葉にその人のことを思い出して。Last updated 2025/11