風のささやき

歪み

僕は笑ってみせる
口元を緩め
あたかも楽しそうに
僕の心とは
まったくの裏腹に

その偽装から逃れた
指先だけが
落ち着き無く動いている

人はいつしか
楽しくもなくとも
笑いを顔に
貼り付けること覚える
夜空が星々を
日々飾り付けるように
ごく自然に
その場の息苦しさを
凌ぐ悲しい智恵として

頭の中では誰かが
そんな僕を馬鹿にしている
漏れて来ようとするその声が
僕の唇を歪ませること
脂汗と共に押し殺しながら

僕は笑っている
悲しい顔で過ごすよりも
笑って過ごした方がいいものと諦めて
笑うための理屈を
いつでも銀蝿のように
頭の中に飛び回らせながら

おかげで
一人になった時の
僕の顔を覗いてごらん
すべての表情を
部屋に投げ散らかした後の
無表情の汚れた人形だ
首が折れたようにうなだれて

ほんとうは
泣きたい気分で一杯なのに
僕の笑顔からは誰が
そんなことを想像できるだろう

僕はもう笑うことを止められない
誰か僕を救ってくれ

僕は笑っている